【来訪編】

傍観者ではいられない
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第二話(3)おまけ:トロデの日記
≪出会い編≫

 

○月○日

 城を抜け出して南の塩湖に向かった。
 愛馬に水筒の水を飲ましていたところ空間が歪んで、なんと人が落ちてきた。
 その「人」はまだ十代前半の少年のようだった。
 彼が落ちたと同時にその背中で爆発音がしたので、
 何かに追われ、攻撃されたのかと思ったが、そうではないようで誰もいない。
 少年の背中の荷袋が燃え出したので、湖の水をかけ消火した。
 塩水だが、まあ火は消えたので大丈夫だろう。
 少年は、理由は分からないがまるで毒にでも侵されたようにもがき苦しんでいた。
 塩水のせいだろうか。大変だ。
 私は彼を助けるべく、彼を連れて城に戻った。

 大臣にまた怒られた。
 結果的には人助けになったのに理不尽だ。


○月○日

 城の神父の力をもってしても少年の毒は解毒できないようだった。
 嘔吐を繰り返し熱は高い。なのに顔色は紙のように白い。
 今にも死にそうなその様子に私は気が気ではなかった。
 拾った以上助けたい。
 私は将来この国の王になる者だ。
 たとえ彼が国民でなくとも、人一人救えずして何が王だ。
 自分より年下だろう彼を見捨てるだなんて選択肢は私にはない。

 ちょうど週末のミサだったので、今までにないほど真剣に神に祈った。


○月○日

 寝ずの看病をしてくれているメイドから報告があったそうだ。
 少年の容体は少しよくなって、今は昏々と眠り続けているらしい。
 熱はいまだ続いているが、嘔吐はしなくなったと。
 神に祈った甲斐があったということだ。

 最初の一週間は誤魔化せたがさすがに痺れを切らしたらしい教師に捕まった。
 せっかく彼の様子を見に行こうとしてたのに、この××め!


○月○日

 ようやく少年と面会できた。
 とはいえ相手はまだ眠り中。私がいるときに一度目を覚ましたが、
 焦点が定まらないらしく目を泳がし、また眠った。
 そのわずかな時間であるが気付いたことには、
 どうやら少年とは言葉が通じない可能性が高いということだ。
 何か言っていたが、意味のある言葉ではなかった。
 しかし今思い返してみれば、あれは言葉だったのではないだろうかと思うのだ。
 少年の顔は見たことのない顔つきだ。
 王子という身分上、世界中の地域の者と会う機会がある。
 そんな私でも彼の顔つきがどこの者かということが全く予測できなかった。
 彼の現れ方もまた不思議だった。
 私は行ったことがないが、この世界以外にも世界が存在するという。
 もしかすると少年はそういう、別世界の人間ではないだろうか。

 うむ、私はなかなかロマンチストだな。


○月○日

 父上に呼び出された。
 当然だが、少年のことは父上の耳にも入っているらしい。
 昨夜考えていたこともあり、私は少年を保護することを申し出た。
 私に甘い父上はすぐに承諾してくれた。
 ただし外聞上、彼が起きてからどういう人柄か見るそうだ。
 目が覚めてみないことには確実なことは言えないが、
 もし想像どおり別世界の人間ならこの世界に身寄りはない。
 つまり拾った私のものだ。
 私は常々民が当たり前のように持つように友人が欲しいと思っていた。
 少年は私の友人として迎えればいいのではないだろうか。
 少年は身寄りが出来、私は友人を得る。
 なかなかの名案ではないだろうか。きっと少年も喜ぶだろう。

 もし別世界の人間でなく、ただの迷子で身寄りがあるなら……、
 (インクがぼたりと落ちた跡がある。どうやら考え込んでいるらしい)
 身寄りがあるなら、まあ返してやらんこともないが、
 助けた礼にしばらくはやはり私の友人をさせよう。
 できれば別世界の人間であることを願う。


○月○日

 少年が目を覚ました!
 少年の部屋についてきた大臣の小言を無視しながら居座っていると
 少年が目を覚ました。
 今まで何度か目を開けることはあったが、しっかりと覚醒しているようで
 少年が体を起こした。
 ああこれほど喜ばしいことがあるだろうか!
 私の想像どおり、彼とは言葉が通じなかった。
 しかし名前は分かった。というらしい。
 名前の響きがまた珍しいのでやはり別世界の者かもしれない。
 顔色はまだ悪いが、話しかけると笑顔を返してきた。
 私の名前も呼んだ。父上以外では久方ぶりに呼ばれた気がする。

 これからは友人だと言って握手をした。
 には通じてないだろうが、頷いたのは確かだ。
 これで約束は取り付けた。私とリョウは友人だ。
 ああ何をして遊ぼうか!






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2010/06/05